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キビナゴやイワシをエサにした流し釣りは、沖縄の「スルルー釣法」やシマノが提唱した磯からの「ビッグゲーム」、あるいは最近では「スーパーフカセゲーム」、ナンていうのがありますが、串本のカセ釣りでも同じような考え方の釣りがあります。
イワシフカセの青物釣りなどは、その典型と言えますが、この釣りを夏場にやると、「もう、すごいのが当たってきますよ」って言うのが、カセ釣りレッドゾーンの釣りです。
ただ、レッドゾーンの釣りも、その年によってメインで釣れる釣り物に偏りがあります。猛烈なサイズのイズスミにバチンバチンやられた年もあったし、青物が妙にたくさん居たり、グレがやたらと濃い時もあるし、昨年(2021年)などはイシガキダイがボチボチ釣れたり、年度や月によっても釣り物が微妙に変わるのは常と言えるでしょう。
2年前の2020年は赤灯前カセは大型グレが豊漁で、イズスミよりも雰囲気があったわけですが、この時にウキフカセを試したら、かなり感触が良かったことがありました。それ以降、グレ狙いはウキフカセでやっているわけですが、かなりマニアックで面白い上に、レッドゾーンの上物の釣りでは結構使えるので、本稿ではこの釣りの解説をしようと思います。
普段ウキフカセに馴染みのない方にも、何らかのヒントにはなると思いますから、串本のカセ釣りに興味のある人はご熟読ください。
ウキフカセの仕掛け図
ロッドについて
まず、この仕掛けでの狙いものは「グレが中心」と思って下さい。
この仕掛けに巨大イズスミ(5キロオーバー)が襲い掛かってきたら、相当にやり取りが出来る人でもほとんどバラしてしまう事になります。
これはアングラーの釣りスキル(腕前)云々の話では無く、巨大イズスミが当たるのは(要するにカセ釣りレッドゾーンの舞台は)、権現周辺から、大島港の赤灯周辺を経て、水谷地区の辺りで、この海域は小割銀座になっているのでロープが多く、大きいのが当たっても走らせて取り込むって言うのはほぼ出来ないという「ロケーションの問題」です。
これが解っているから5号や6号の磯竿を使ってウキフカセスタイルでやった事もありますが、ウキフカセのスタイルは基本的に手持ちで釣りをやっていくスタイルでもあるし、このくらいの号数のロッドは自重があるので細かい操作性が難しくなります。(まあ、重いです)
やはり、大きな号数の磯竿を使う場合は、完全フカセスタイルの置き竿釣法が段取りが良いです。
手持ちで操作がしやすいウキフカセの磯竿の号数は、普通の腕力(体力)を有した男性諸氏で2号まで、女性や中学生くらいのお子さんなら1.5号くらいまでが扱いやすいと思います。
道糸ハリスについて
道糸はナイロンラインが良く、出来ればサスペンド系のナイロンラインが段取りが良いです。(磯釣りの上物用の道糸にあります)
ナイロンはフロロに比べて低比重なので、早い話、「沈みが悪い」わけですが、ウキが馴染むとサシエの落下速度でそのまま(自然に)落とし込むような釣りをするので、道糸にフロロを使うと沈みすぎて、仕掛けを中層で上手にサスペンド(浮遊)させるのが難しくなります。
また、ナイロンは伸縮性に長けているので低号数でも強度があるし、水を含んでしなやかになると言う特性もあるので、スピニングリールに巻き込みやすい特徴もあります。
磯竿の1.5号を使用するなら3号から4号の道糸で、2号ロッドなら4号から6号の道糸で良いと思います。それ以上の号数になると、今後は、円錐ウキの操作がしづらくなってきます。
ハリスは、グレだけ狙う場合は3号で、グレ以外の何かが当たりそうな場合は4号から6号、青物があるときは、思い切って8号のハリスを使う場合もあります。
仕掛け全体の強度を上げるなら、道糸の号数より大きな号数のハリスを使うこと。年配の人に多いが、例えば「3号の道糸なら2号ハリスが当たり前」みたいなことを言う人が多いが、これはもう「間違い」と言っても良いだろう。
例えば、根掛かりをして道糸をつかんで引っ張ると、おおよその場合で道糸から高切れを起こす。逆に大きな魚に力負けしたときは、大半の場合、ハリスが吹っ飛ばされることになる。要するに、仕掛け全体で見た時、「引っ張る側から切れる」となる。
なので、大きな魚を目指す場合(バラしを少なくしたいなら)、道糸の号数より大きな号数のハリスを使うのが良い。
ウキと仕掛けについて
ウキは円錐タイプのウキなら銘柄とかにこだわる必要は無いです。選び方の基本は、道糸の号数に大きな号数を使用する時や、遠投、あるいは距離を流すような時は、大きな径のサイズを選ぶ。逆に、1.7号や2号のように細い道糸の使用時や、竿下、際など、近い距離を釣るときは小さい径のものを選ぶと良いです。
カセ釣りレッドゾーンのウキフカセの釣りでは、ラインの号数が大きいので径のサイズはLサイズでも良いですが、遠投したり、50mも100mも流したりすることは無いので、Mサイズの径(Φ)で、号数は3Bから5Bくらいの号数が使いやすいと思います。
「ゼロ負荷のウキが食い込みが良い」というような表現も良くされますが、イワシの一匹付けで狙うこの釣りは、ゼロ号のように、あまりに低浮力のウキだと、仕掛けが馴染む前にウキが沈んでしまいます。サシエのイワシが設定したタナまで落ちて、それからエサのイワシの重量や表面積に掛かる圧を利用してウキを沈め込んでいくので、扱いやすい具体的な号数は3Bから5Bとなります。
また、この釣りではガンダマも使用しますが、※針上8cmから15cmくらいの所に、ウキの号数分のオモリを一つ付けるのがコツです。
(※ こういうオモリの付け方を「口鉛(くちなまり)」と言います)
口鉛を使用することで、イワシの落下を頭から落下させて、落ち込みで食わす(ルアーで言う所の「フォールで食わす」)のがキモです。
尚、イワシの付け方は、前項で示した通り、目を抜いて腹に針先が来るように付けるのがコツ。グレはイワシ一匹のサシエを食いに来る場合、必ず腹の部分をカブって来るのでこういう付け方をしますが、この付け方では針もある程度の大きさが無いとエサが付けづらいし、その具体的な号数が「12号」となります。(伊勢尼でも良いと思うが、伊勢尼は伸ばされやすいので軟調の竿の使用時に限る)
上の写真のグレも、イワシを真っ二つにしてるでしょう。イワシの腹の部分をカブって来るので、こういう事になります。
また、道糸とハリスの結束はサルカンを使うのもコツと言えます。サシエの回転による道糸の糸撚れが発生しやすいので、ヨリモドシ(サルカン)を使えば、多少は撚りも緩和されます。
エサ取り対策でペレットを使用する
カセ釣りレッドゾーン実釣の時期は梅雨から夏場に掛けてですが、基本的に、小アジ、小鯖のエサ取りが強烈な時期でもあります。(ツバスやシオの子なども大量発生したりする)
これらのエサ取りは、当然イワシも大好きで、対策をしないとサシエも一瞬で取られるかボロボロにされることになります。
小アジ、小鯖のエサ取りが少ない場合(大型魚が潜んでいる時はこう言うことになる場合がある)には、イワシを潰して撒くのが効果的ですが、イワシを潰すことで集魚効果もさらにアップするので、エサ取りが活発な時は、少し手を焼くことになります。
そこで、エサ取り用に、ペレットのしゃぶしゃぶ作戦をやってみましたが、これが案外、効果が高いように思います。
上の動画はペレットに海水を含ませてペースト状にしたものを撒いてます。煙幕のようになって落ちていくので、この粉の部分でエサ取りを止める事が出来ます。(要するに上層にくぎ付けにできる)
上層でペレットの煙幕で小アジ、小鯖の小魚を足止めして、イワシの姿撒き(潰さず撒く)で、中層の良型から大型魚に利かせるという「マキエの分離作戦」は、かなり効果が高いです。
また、集魚剤を使うなども有力です。
混ぜるとこんな感じ
このマキエは、大島港の赤灯波止のグレ釣り師の間で一時期流行ってましたが、それを真似てやってみました。非常に効果が高いと思います。
エサ取り用に、シャクで数回撒いて、小魚が乱舞し始めたら、イワシの姿撒きで数匹撒くようにして、一呼吸入れてからサシを投入すれば、比較的通りやすいです。(投入方法はこれが王道と思う)
「イワシを潰す」「ペレットをペースト状にする(水でふやかす)」こういう「ひと手間」を加えると、集魚効果は元の形状で撒くよりも格段に上がる。上がりすぎてエサ取りが大変なことになる場合が大半だが、カセ釣りレッドゾーンにふさわしい魚が当たってくるのは、こういう、エサ取りを含め「水の活性が非常に高い場合」だ。
釣れるときは、エサ取りと一緒になって、大型グレや巨大イズスミがマキエに群がる姿を目視できる。また、大型魚にスイッチが入っているタイミングでは、活性の高いエサ取りも大きなエサ(そのままの形状のイワシ)などには遠慮をする場合がほとんどだ。
大事なことは「エサ取りを怖がらない事」で、底物にやる気がある魚が居る時などは、エサ取りがあまり出てこないとか、活性が低かったりするので、とにかく、エサ取りにエサ取り用のマキエをくれてやって、エサ取りを注意深く観察することがレッドゾーンへの近道だ
ウキフカセの釣り方
仕掛けをセットして、マキエでエサ取りを狂わせたら、道具を入れるわけですが、
- グレ、巨大イズスが見えるようならウキ下は4mから6m
- ターゲットが見えない時は9mから12m
このくらいにウキ下を設定して、仕掛けが立って(誘導部分が完了して)、ハリスが馴染んだら、じわーーーとウキが沈んでいくように、ガンダマを調整します。(3Bのウキに3Bのガンダマでおおよそ、こんな感じになると思う)
ポイントの水深や潮流の強弱にもよりますが、完全にウキが見えなくなっても、そんなにサシエは深く入っていないので、暫くは、これで様子を見る感じです。この時に「張らず緩めず」でラインを送り込んでいくのがコツ(キモ)と言えます。
ナイロンラインを使っていることや、円錐ウキは仕掛け全体が斜めを向く(角度が付く)特徴があるので、思ったより深くは入らないし、これで、流れの中でサシエ先行で仕掛け全体をサスペンド(浮遊)させるのがコツです。
やったことない人はイメージが難しいかもですが、食ってくるときは、いとも簡単にこれで食ってきますから、ぜひ、やってみてください。
投げ釣りは仕掛けを投げ込んで海底に着底させて、余分な道糸を巻き取って、出来るだけラインに張りを持たせてアタリを待つじゃないですか。それと感覚的には同じです。
投げ釣りはサシエが海底ですが、ウキフカセはそれを中層でやるわけで、ウキの所が投げ釣りの天秤オモリのような感覚です。
いや、こんなこと書くと、余計に難しく感じますかね?
でも、やってみたら意外と簡単です。
当コラムは連載物です。目次は以下です
- コラム・カセ釣りレッドゾーンのすすめ ~その1・ターゲット~
- コラム・カセ釣りレッドゾーンのすすめ ~その2・ロッドとリール~
- コラム・カセ釣りレッドゾーンのすすめ ~その3・釣り方と考え方~
- コラム・カセ釣りレッドゾーンのすすめ ~その4・ウキフカセ~(現在地)