【引退特別寄稿】カセ釣り奮闘記・10年間の串本のカセ釣り(第三章:Youtubeとビジネス展開 その3)

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(視聴者の求めるものは、このようなブン曲げでは無い、と解ったけど)

エンゲージメント

Youtubeの収益性を上げるには、エンゲージメント(「思い入れ」や「愛着心」のような意味)に関わる数値をそれぞれ上げていく必要があります。

視聴者がチャンネルの動画に思い入れや愛着心があれば、高評価やコメントの数も増えるわけで、こういうエンゲージメントに関わる各数値が上がってくれば、Youtubeからのお勧めも受けやすく、視聴回数やチャンネル登録者の数も増えてきて、それに伴って収益性も良くなってくるというわけです。

ウチのチャンネルは、このエンゲージメントの各数値を上げるのが本当に大変でした。

動画の完成度に問題は無かったのかと言われたら、そりゃ無いとは言い切れないですが、それ以上に、「ターゲティングしている視聴者層に問題がある」と分析してました。

「串本のカセ釣り」を題材にしているという事で、これは具体的には「エサ釣り系の釣りに興味のある中高年の男性」をターゲティングすることになります。

ただ、暫くして、この層(釣り好きの中高年の男性)は基本的に、コメントや評価ボタンのクリックなど「アクションを起こす」という点においては、消極的な人が極端に多いのが特徴になっていることが解りました。

ライバル動画のコメント状況なども調査してみるわけですが、演者の技量が低い場合や、演者の年齢層が若い、あるいは女性の場合は積極的にコメント等で「教える」という行動に出たがる人が結構多かったり、オフで付き合いのあるアカウント間でのコメントのやり取は活発だったりすることなどが解りましたが、演者の技量、知識等がハイレベルであったり、演者が知らない人の場合などは、極端に人見知りのような状態になるんじゃないかと思いました。

「いや、こういう心理とかをナンか逆用する方法って無いかな」というのは、ちょっと思いましたね。

とにかく、エンゲージメント率が悪いので、視聴回数やチャンネル登録の各数値も低空飛行を続けるわけですが、そんな中、Youtubeにもショート動画が出来ました。

「藁にもすがる」では無いですが、何か突破口をと常に考えていたし、ちょっとやってみようと思って、つらつらとショート動画のアップを始めたところ、軽くバズった動画が出てきました。

「釣った魚を見せろ」で見えたもの

Youtubeのショート動画は、TikTok同様に視聴者層の民度の低さが問題視されてましたが、「なるほど、ひどいもんやな」でした。

上は竿がへし折られた様子をショート動画にしたものですが、まあ、コメントではケチョンケチョンに叩かれました。笑

「スピニングロッドなのに両軸リールで使用するから折られる」とか、「ドラグの設定を知らんのか」とか、あまり魚釣りの事に詳しいとは思えない連中からの中傷コメントが並んだわけなんですが、中傷コメントとは言えコメント数は稼げるわけで、エンゲージメント率の向上にはかなり役立つことが解りました。

炎上商法じゃないですけど、「(チャンネルを)賑やかにさせる」という点ではこの手のKZ(クズ)どもは結構使えるというか、賑やかになれば視聴回数もチャンネル登録数も伸びるわけで、「これを使わない手は無い」と考えてました。

次に、以下の動画は、当チャンネルで最高の視聴回数を稼いだショート動画です。

「ロッドの限界手間(極限)の弧を描く」という、僕のポリシーがよく表現されている動画です。

当たった来たのはアカエイだったので「獲物を見せても仕方ない」と思ったし、ショート動画という事で1分以内で仕上げる必要があるので、「ブン曲げの部分」だけを強調したわけですが、この動画では「釣った魚がナンだっかった見せろ」というコメントがたくさん並びました。

僕は最初、「そんなにエイを観たいんか?」と思いましたが、青物やグレ釣りの動画で同じようにブン曲げ部分だけの動画をアップすると、やっぱり同じように「釣った魚を見せろ」というコメント多数来ました。

「そうか、これは僕の認識不足と言うか、僕の価値観が既に化石かもしれん」

僕が「釣り師」として活動を起こしたのは30年前(1993年)で、その頃から2010年頃までは、釣り具の完成度は今の釣り具の完成度にはるかに及ばない、と言うか、当時の釣り具は、フラッグシップモデルでもハイエンドモデルでも「何処か肝心なところが抜けているような釣り具ばっかり」だったんですよ。

「道具はあくまで手の延長」なので、抜けている所は技量で補う必要があったし、そのために練習して鍛錬するのは当たり前というのが叩き上げの僕らの常識です。だから、デカいヤツとのやり取りにおいては竿の角度とか体の使い方とか、そういう部分が肝心で、大きな魚を釣りたいと思う人はそういう所を観て参考にするべきと思ってました。

しかし、昨今の釣り具を考えてみると、道具の完成度が「ここまで来たか」って言うくらい完成されているわけで、30年前の昔みたいに「抜けている部分」なんて、もう何にも無いわけですよ。どちらかというと、抜けているのは釣り人側の技量だったり、感性だったり、メンタルだったりするんですが、昨今の釣り具は「それを補って余りある完成度になっている」わけです。

極端な表現ですが、「魚がどんなのかが分かれば、後は釣りに行けば釣り具がやってくれる」というのが現代の釣りという事です。視聴者の中には、そういうのが感覚的に解っている人がいて、彼らが求める興味の対象と、視聴者のためを思っての僕の表現に、ズレが生じているという事だと解りました。

改めて、僕は「平成の釣り師」で、令和の釣り師は、僕の感性自体が受け入れづらいし、僕が伝えようとしていることは部分的には老害みたいになっている部分もあるのかしれないと気づかされた、というか、こういうのも、エンゲージメントの各数値が上がらない原因になっているとも思いました。

とは言え、KZどもに迎合(げいごう)するなんてありえないし、そんなことをするくらいなら、僕の感性からして「釣りをやめた方がマシ」です。

逆に、「毒には毒をもって制す」の方が僕らしいし、「KZコメントを逆用してやろう」と考えました。エンゲージメントの向上という部分では、大いに利用価値はありますからね。

誹謗中傷の利用価値

ショート動画における誹謗中傷コメントは日に日にその数を増すようになってきました。

中傷コメントの内容はどう考えても、妬み、やっかみ、ひがみ、嫉妬から来るものがほとんどなので、意に留める必要もないモノなんですが、「人が(誹謗中傷を)やっているから、自分も言ってやろう」みたいな、群集心理で徐々に増えている感じがしました。(ホンマにKZですな。笑)

ちなみに、誹謗中傷のコメントって目立つので、数十並んだだけでボロカスを言われているように見えるんですが、高評価数もチャンネル登録数もうなぎ上りで、チャンネルの進め方自体は「これで良いかな」と思ってました。

2023年3月の数字。高評価14万4千。チャンネル登録は2万6千人だった

上の数字から言えることは、KZ(クズ)の数も多いけど、それ以上に優良な視聴者もドンドン増えてきているという事。こうなると、同船サービスの依頼の数も増えてきて、収益性としても「そんなに悪くはなかった」という感じでした。

とにかく、誹謗中傷コメントをする連中のおかげで、優良視聴者の数も増えていることも確かなので、中傷コメンテーター(妙な表現ですが。笑)を活発にさせる方法として、以下の二つをやってみました。すなわち、

「釣った魚を見せない動画を作った」
「ライフジャケットの着用をやめた」

釣った魚を見せない動画は、「見せろ、見せろ」と自動的にコメントが入るとは前に触れた通りです。

ライフジャケットの未着用は、実際、褒められたものでは無いですが、アンチから「ライフジャケットをつけろ」のコメントは結構来るんですよ。僕としては、釣りの事で突っ込んでこれない低レベルのアンチの連中に、「ライジャケ未着用」というエサ(ツッコミどころ)を与えている感じでした。

ちなみに、串本のカセ釣りでは、小割にベタ付けのカセではライフジャケットの着用義務はありません。(アンカーカセはあります)

要するに、ライジャケの着用は100%義務では無くて「モラルの問題」なんですよ。とはいえ、範を垂れるべき立場の僕は、本当はライフジャケットは着ないといけない立場なんですが、「チャンネルの各数字を伸ばすために着なくなった」が本当の所だったりします。

釣りの事は、よー突っ込まんでも、ライジャケの事は突っ込めるアンチを「ライジャケ屋」と呼んでましたが、ライジャケ屋の効果のほどはボチボチだったですね。笑

この作戦が奏功したのかどうかは、正直なところ、「よく解らない」なんですが、数字の伸びはニッチジャンルにしては、「中々のモノだった」と評価できたと思います。

いやいや、今だから話しますけど、こんな感じで色々とやってたんですよ。本当に、大変だったですね。

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兼崎 秀治串本大島カセ釣り研究所代表

投稿者プロフィール

串本大島カセ釣り研究所を運営しております、HN海信(本名:兼崎秀治)です。
波止釣り、磯釣りを経て、現在カセ釣りに夢中ですが、12歳から釣りやっているので、釣り歴は40年以上です。

現在後進の色々な人に釣りの魅力を伝えるべく、日夜邁進しております。どうぞよろしくお願いします。

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